「恋煩い」

                          BY 月香




……恋の病を治すには、相手と両思いになるしかねぇ。だが、リクオの相手が誰なのか、さっぱりわからねえ。
もう一つ直す方法は、相手をきっぱり諦めさせることだ。この両方を満たす方法が一つだけあるぜ。
もうすでにリクオのことを好きな奴に、リクオが惚れればいいんだ。そしたら、失恋もしようがねぇから、恋の病も治るってもんよ!
……さて、誰かリクオのこと好きな奴いねえかな。お、いるじゃねえか、丁度良いのが!
「おーい、雪女!」
「はい?何ですか?」
「お前、リクオのこと好きだよな?」
「も、もちろんです!」
……ってことは、やっぱ今のリクオの恋煩いの相手は、雪女じゃねえな。コイツだったら、悩む必要ないもんな。
「じゃあ、リクオと付き合ってやってくれるか?」
「ふぇええ?そ、そりゃあ嬉しいですけど……でも!」
「よし、そうと決まれば、惚れ薬だな。あと、前の女を忘れるように忘れ薬も。これで、完璧だな!」
「──ちょ、ちょっと鴆様〜!!」
「リクオには一生、恋煩いなんてさせやしねえぜ!」



◇◇◇



「ちょっと、鴆君、それ何?……見るからに怪しい薬なんだけど」
「大丈夫だ、リクオ!オレがお前にヤバイもん飲ませる訳ないだろうが」
「そ、そりゃ……鴆君のことは信用してるけど……たまに信用出来ないんだよね」
「何だと?」
「ううん、何でも無いよ。それ、何の薬?ボク、今、別に体の調子も悪くないし……」
「何言ってんだ。お前、恋煩いなんだろ?」
「・・・はあ?」
「寝ても覚めても、ため息ばっかで、食事も進まねえらしいじゃねえか。睡眠障害と食欲不振、気力減退は立派な病気だぜ!」
「え、ええええ?何?それ、どっから聞いたの?!」
「どっからって、それは……まあ、それなりの情報網からだ」
「……どうせ、首無とか黒とかなんでしょ」
「う、まあ、話の出所はどこでもいいじゃねえか」
「……で、それが恋煩いを治す薬なの?」
「ああそうだ!……お前が、誰を好きなのかわかんねえけどよ」
「あ、分かんないんだ(がっかり)」
「何、がっかりしてんだよ?」
「ううん。で?」
「まず、こっちの薬。まず、お前が今好きな女を忘れる薬だ」
「ぶっ」
「で、次ぎはこれを飲むんだ。これは、初めて見た相手を好きになる薬だ。これで、最初からお前のことが好きな相手をお前が好きになりゃ、恋煩いなんて一生しねえぞ!」





「……てっきり、睡眠薬とか胃腸薬を持ってくるかと思ったら……」
「それもちゃんとあるぜ。けどな、病気ってのは大本を絶たないと駄目なんだぜ」
「……鴆君って、恋煩いなんてしたことないでしょ?」
「何、変なこと言ってんだよ」
「やっぱり、無いんだ」
「ちゃんと、お前の相手は用意してある。向こうにも了承済みだ。おっと、念のため向こうにも惚れ薬を飲んで貰うか」
「へえ、聞きたくないけど……誰?」
「雪女だ」
「……そりゃ、つららがボクのこと好きなのは知ってるけどさ……」
「どうだ、完璧だろ」
「──分かってないなぁ」
「何がだ」
「ボクの、恋煩いの相手が分かれば、もうちょっと違う治療方法があるって分かるはずだよ」
「……だって、誰だよ、お前の好きな奴」
「鴆君には言わない」
「……思い当たるふしがねえもん、じゃあ、わかんねえよ」
「本当に?」
「ああ」
「じゃあ、ヒントあげる」
「おお、くれよ」
「じゃあ……準備するから、目、瞑って?」
「おう」
「……ちゅ」
「……ん?」
「分かった?」
「……んんんん?」
「まだわかんない?」
「うーん」
「じゃあ、今度は目、開けてていいよ」
「……ちょっと、待て!!」
「何?」
「お前、今、オレに何するつもりだ!?」
「何って、キスだよキス、接吻、口吸い……」
「うわー、それ以上言うな!」
「今度は、わかったよね?」
「……あ、ああ……」
「で?ボクの恋煩い、直してくれるんでしょ?どうするの?」
「うー」
「ねえ?顔、真っ赤だよ?」


(終)


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(20121130)
’12,2,22にUPした拍手のネタ。