Circle Days
【工藤と服部……1】 「で、電話で言うのもなんなんだけどさ」 『おう、なんや?』 「……オレさあ、お前のこと、その……好きなんだけど」 『へ?オレも好きやで?』 「そ、そうか♪」 「−−って、お前この間、電話で言っただろうがっ!」 「せ、せやかて、アレって『トモダチ』の好きやんかっ!」 「オレはそうじゃないんだよ!オレは、『恋人』の好きなんだよ!」 「お、オレら、男同士やんか」 「だから、オレがどれだけ決心して、お前に告ったと思ってるんだ!それで、お前もオレのこと『好き』って言ってくれたから、すっげー嬉しかったのにさ。そんですぐに東京来てくれたじゃんか。……期待してたのに……何?『トモダチ』だって?」 「普通、そう思うやんか!それに、そうだとしても、いきなり押し倒す奴がおるか!!」 「−−いいよ、分かったよ。悪かったな、変なことしちまってさ。……じゃあな」 「うん……ほな、オレ大阪帰るで?新幹線の時間くるし」 「ああ、じゃあ−−サヨナラ」 「−−って、何で『サヨナラ』言うんやっ!めっちゃ終わりみたいやんか!」 「だって、もうオレ達終わりじゃん」 「何、拗ねとんねん。付き合うてもおらんのに、何で、終わりなんやっ?!」 「お前、オレとこのまま付き合うつもり?−−オレさあ、振られた相手とさ、今まで通りに普通にトモダチやる自信、無いんだけど」 「お、オレと、友達も止めるん?」 「まあ、そーゆーことになるかな」 「オレは嫌や」 「まあ、10年くらい経ったら、ふっきれてるかもな……」 「10年……?そんなに?」 「ま、10年ってのは、大げさだけどな。そのくらいかかるんじゃねーの?オレ……結構、ショック大きいんだけど?」 「嫌や、そんなに工藤と離れたない」 「オレは、離れたいの。そうじゃないと、オレ、お前に何するか分かんないぜ?」 「うっ……何かって?」 「……お年頃の高校生がやりたいことって言ったら、お前も分かるだろ?」 「な、何言うてんのっ!?」 「そんな赤くなんなよ。じゃあな、服部。−−元気でな。気を付けて大阪帰れよ……」 「工藤……」 「やっぱ、アカン!!工藤と電話も出来ひんし、会えんし、気が狂いそうやっ!」 「−−って、それで、オレんちに来たわけ?お前、大阪と東京の距離分かってんのかよ?」 「工藤が悪いんやんか!電話しても出ぇへんし、メールにも返事くれへんし……」 「お前に振られて、まだ一ヶ月じゃんか。……オレまだ、立ち直ってないんですけど」 「オレがガマン出来ひんのや!」 「だーかーらー、オレに近寄るなって言ってるだろ。押し倒して、キスすっぞ」 「−−エエよ」 「はい?……何て、言ったんだよ、今」 「エエっちゅーたんやっ!これ以上、工藤と話しもせんでおったら、オレ、気ぃ狂うてしまうわっ!」 「−−そんなに、オレのこと『好き』なのか?」 「おう、好きや!……せ、せやけど、友達の『好き』やで?」 「−−その辺の境界線ってのは、一体どこにあるんですか?服部平次くーん?」 「分からんわ、そんなん」 「分かんないわけないだろ?オレのこと、好きなの?」 「好きや」 「けど、友達の好きなんだろ?いいよ、オレに気を使わなくても」 「気ぃ使こうてるんやないで。オレが、工藤と会えへんで、気ぃ狂いそうやて言うてるんや!」 「−−それって、オレとお付き合いしても、いいってこと?そーゆー覚悟、してる?」 「……してる」 「ホント?でもさ、友達だと思ってるヤツに押し倒されて、お前平気なのかよ?」 「工藤と、もう会えんよりはマシやもん。……工藤、電話も出ぇへんし、蘭ちゃん経由でも連絡くれへんし、オレ、もうどうしよぉかと……」 「あっ、おいちょっと、泣くなってば!」 「くどぉがイケズやからや」 「イケズしてんのは、お前の方だろうが。だってよ、お前、本当にいいわけ?オレがお前見て、何考えてるか分かってんのかよ?押し倒して、キス−−だけじゃ、止まんないぜ?お前、そこまで覚悟あるのかって聞いてるんだよ」 「ある」 「ふーん……じゃあ、押し倒してキスした後は、服脱がして、耳舐めまわして、首にキスマーク付けたりして、胸なんかも舐めちゃったりして、乳首とか吸っても──平気?」 「お、お前、何ちゅうこと言うんやっ!」 「ほら、やっぱ無理なんじゃん。まだ、引き返せるぜ、服部……大阪、帰れば?」 「帰らへん」 「いーのかよ」 「ええよ」 「−−じゃあ、とりあえず、試してみようか?」 「……え?」 「試してみようぜ、キス。平気かどうか。実践してみよーぜ」 「え、えと……」 「もう、止められないからな……」 「工藤っ!ん……んんっ!−−はっ……うひゃー……」 「−−で、どうだった?オレのこと、キライになったんじゃねーの?」 「……キライや、ないよ」 「舌入れられても?」 「そ、そおや。……あんま聞くなや。は、恥ずかしいやんか……」 「……ふーん(これって、脈有り、かな?)」 「工藤こそ、男なんかに手ぇ出して、後悔したんやないの?」 「いや、全然。もっとしたいくらい」 「へ?も、もっと?」 「……今日はもういいよ。ありがとな、付き合ってくれて」 「──でも、それでもお前、『友達』の好きだって言うんだろうな……」 【服部と友人……1】 「こーゆのって、変なんやろなぁ」 「何、平次、めっちゃ悩んどるって顔しとるで?」 「……なあ……友達と、恋人ってどっから違うんやろ?」 「あ、何、そーゆー悩み?まさか、とうとう遠山と……」 「ちゃうわ、アホ」 「え?ちゃうの?なあ、誰なんや?その相手って」 「……東京のヤツなん」 「ふーん、遠距離か。大変やな」 「そおや、めっちゃ大変なんや。オレ、どおしよう」 「どーしよおってなぁ……お前、そいつんこと、どう思ってるねん?」 「やっぱ、トモダチやろなぁ」 「なら、そう相手に言えばええやろ」 「言うた。そしたら、もう会われへんて言われてな」 「そら、極端な話やな」 「そやろ?!そーやろ、なあ!酷い話やろ」 「そんなヤツ、縁切ったらええやん」 「−−切りとうないんや、絶対」 「うーん、複雑やなぁ」 「……そおなんや。話しして(気のあった推理なんかして)、同じモノを見て、ずっと一緒に居る……だけやとアカンのかなぁ?」 【工藤と服部……2】 「……とか何とか、悩んどっても、やっぱここに来てまうんやもんなぁ……」 「−−服部?オレんちの玄関先で何、唸ってんだよ」 「あっ、すまん……」 「いや、嬉しいけど、さ。東京に来るなら来るって言えよ。まあ丁度良いって言えばそうか」 「何?」 「オレ、目暮警部に呼ばれてるんだけど、お前も来るよな?殺人事件だそうだ」 「え?行く行く、オレも行くで!」 「−−じゃあ、来いよ」 「サンキュー、助かったぜ」 「そんなん、工藤やったら、オレがおらんでもパッと解決出来たんとちゃう?」 「いいんだよ、オレがお前と一緒に推理したかったんだから」 「−−こおゆうんや、アカンの?」 「ん、何?」 「オレら、こおゆう関係やとアカン?一緒に事件の捜査したり、推理の話ししたり。−−どおしても、色恋ごとに持っていかな、ダメなんか……?」 「やっぱ、オレとキスしたこと後悔してるんだ」 「そおやない。後悔なんかやないで。−−今までのことやのぉて、これからのことなんやけど……今は良くても、いつか、きっと後悔するで?」 「お前が?」 「工藤が、や!」 「オレ?−−しねーよ、後悔なんて。だったら、最初っからお前に告らねーよ」 「……」 「お前は、しそうだな。−−後悔」 「……分からん」 「じゃあ、止めよっか?」 「あああぁっ、アカン!お前、そお言うて、もうオレと会わんとか言うつもりやろ!?」 「じゃあ、キスしろよ」 「へ?」 「お前から、キスしてくれよ。まあ、イヤなら良いけど」 「−−あ……」 「−−ごめん、悪かった。いいよ、しなくても」 「す、すまん……」 「お前が謝ることじゃねーよ。……なあ服部、もしお前にさ、恋人みたいに好きなヤツができたら、紹介しろよ」 「は?いきなり、何言うてんねん?」 「変な話じゃないだろ。いつかは、そういうことになるんだぜ。−−そうすれば、オレなんていなくても平気になるかもしれないし」 「そ、それは……」 「だから、祝福してやるからさ、ちゃんとオレに紹介しろよ。分かったか?」 「……ああ、分かった。その……工藤もな?」 「うーん、オレは今の所、お前一筋だからなぁ。まだ先の話だぜ、−−多分」 「知ってるか?人間の脳みそってのは、一回好きになると、脳内ホルモンの関係で5年間くらいは、その気持ちは残るらしいぜ。−−お前が、オレのこと忘れても、オレはあと何年かはお前のこと、好きでい続けるかもな……」 【和葉と服部】 「なあ、平次、聞いとんの?」 「……なんや和葉か、どないしたん?」 「やっぱり、聞いてなかったんやろ?あんな、今週、蘭ちゃんが大阪来るから、アンタは工藤君、家に泊めたってな」 「へ?何で、蘭ちゃんが来ると、工藤が来るん?」 「何でって、蘭ちゃんには、工藤君がつき物やろが!」 「……どーいう理屈やねん。って、何やと!ほな工藤がオレんちに泊まるんか?!」 「−−別にええやろ?工藤君、アンタの友達やんか。ははーん、さては、ケンカでもしたん?アカンよ。アンタが工藤君に勝てるわけないやんか。工藤君、めっちゃ、口うまそうやし」 「腕力やったら、負けへんで!」 「その前に、アンタ工藤君に殴りかかる気ぃあるの?」 「ない。──っておい、オレは別に工藤とケンカしとるんやないで?(逆や、逆!迫られて困っとんねん!)」 「まあ、ええやん。じゃあ今週末は、4人で大阪見物やね♪」 「オレもか?」 「あったりまえやんか」 「……オレ、こんなんで工藤に会うて、平気やろか」 【工藤と蘭と和葉と服部】 「蘭ちゃん!こっちや!」 「和葉ちゃん、久しぶり!」 「ようこそ、大阪へ!ちょっと見んうちに、また可愛くなったんやないの?……で、工藤君とはうまくいってるん?」 「や、やだ。和葉ちゃんってば!全然そんなんじゃないのよ」 「ほら、工藤君。蘭ちゃんの荷物持ってあげてぇな。女の子は、荷物多いもんなんやで?」 「分かったよ。──げ、ホントに重いな」 「いいわよ、自分で持つから。新一だって自分の荷物あるじゃない」 「あ、じゃあ、オレのは服部が持てよ」 「−−え?何?何か言うた?」 「嫌やわ、平次。何を呆けてるん?アンタ最近、おかしいやん」 「……おかしいか?オレ」 「お前さあ、何か機嫌悪い?やっぱ、いきなりオレが大阪来ちゃって迷惑だったろ」 「そんなんやあらへんよ。工藤は気にすんなやって」 (−−アカン、なんや胸がムカムカする。何でやろ?せやけど、さっきまでよりは、マシやなぁ) 「えーっと、ここがオレの部屋や」 「お邪魔しまーす。これが服部の部屋かぁ。──なあ服部、オレ今夜ここに寝るの?」 「うん?オカンが布団ここに敷いたんやけど……あ、お前、ベッドやないと寝られへんとか言うんか?ほなオレのベッド使えや」 「バーロー、余計悪いよ。(お前の匂いのするベッドなんて使えるか!)……オレは、お前の部屋で−−ここで、寝ればいいのか?」 「そおやけど?何?」 「お前さあ、オレがお前のこと好きだって知ってるだろ?同じ部屋に寝泊りなんかしたら、オレ、ガマンできなくて──襲っちゃうかもよ?」 「−−え?ああ?そ、そおなん?」 「そーだよ。お前、ホント分かってないな。このままだと、この間したことよりも、もっとスゴイことしちゃったりしてな」 「な、何言うてんのや!ここには、オカンもオトンもおるんやで!?」 「関係ない」 「うわっ!何するんやっっ!どこ触ってんねん!」 「止めてほしい?」 「止めんか!アホ!」 「じゃあ、−−お前からキスしてくれよ。そしたら、止めてやるよ」 「−−え?……あ、……」 「……いいよ。もう、いいから。そんな泣きそうな顔すんなよ。−−お前さあ、イヤなんだろ?オレとそんなことすんの。ガマンできないんだったら、止めていいんだぜ?」 「大丈夫や……」 「へえ、そうなんだ。男にキスされても平気なのに、それでもお前は、オレのこと好きじゃないって言うんだ?」 「わ、分からん」 「……ふーん」 「−−何で、工藤はオレがええの?」 「うーん。何でかなぁ、なんか気が付いたら、お前のことしか頭に無かったから。もう、寝ても覚めても、お前の顔が目の前ちらついてさ、最初、頭おかしくなったかと思ったぜ」 「おかしくなったんとちゃうの?ホンマ」 「失礼なヤツだな」 「せやけど、工藤新一言うたら、警視庁の覚えもめでたい名探偵で、頭良ぅて、顔もええし、どっから見ても格好ええし、サッカーはめちゃうまやし。女の子にもモテモテやろし、めっちゃ可愛え幼馴染もおるし、家かて何不自由ない裕福な家やし、オトンは人気推理作家でオカンは元美人女優やし。なんでそんなヤツが、オレんこと好きやて言うん?」 「お前、ホメ過ぎ」 「オレ絶対、工藤は蘭ちゃんと付きおうて、結婚して、子供が2、3人出来て、めっちゃ大きい家の庭にはでっかい犬がおって、外車乗り回して、日本どころか世界の名探偵になると思っとったんや」 「お前は、オレにそうなって欲しいの?」 「あったりまえやんか。オレ、お前に幸せになって欲しいんやもん」 「オレの幸せは、お前と一緒に居ることなんだけど。−−恋人のお前と」 「−−う、それは」 「でも、お前の幸せは、オレの恋人じゃなくて、友達になることなんだな」 「ただの友達とちゃうで!『親友』や!」 「どっちも、一緒だよ。恋人じゃないんならな」 【工藤と蘭と和葉と服部と友人】 「おお、平次と遠山やんか。なんや、そっちの奴らとダブルデート?」 「ちゃ、ちゃうって!アタシらはただの幼馴染やもん。デートは、こっちのおふたりさんやねん」 「ちょ、ちょっと和葉ちゃん!あたし達だってただの幼馴染なのよ」 「そーだよ、お前らと一緒にするなよ」 「アタシと平次は、ただの幼馴染やて言うてるやんか!」 「何もムキにならんでも……分かったから、な?」 「そうよ、和葉ちゃん」 「……ふーん、……平次、お前の東京の相手って、こちらさん?」 「あ?いや、その……」 (アカン、コイツきっと誤解したで。前話した遠距離の相手、蘭ちゃんのことやと思うとるやろなぁ。スマン、蘭ちゃん!) 「いやー工藤と蘭ちゃん、それにしても仲ええよな。一緒に大阪見物来るくらいやし」 「バーロー、ついでだよ。オレもこっち来たかったし、ちょうど蘭が行くって言ってたから」 (服部の奴、オレの気持ち分かって言ってるんだろうな?) 「ねえ和葉ちゃん、あっちの方も見に行こうよ。ね、新一も」 「ああ」 「……なあ、平次。やっぱし、蘭ちゃんと工藤君ってお似合いやね。なーんでふたり、付き合うとらんのやろねぇ?」 「−−そんなん、オレらには関係あらへんやろ」 「平次、何、怖い顔しとるん?」 (オレ、怖い顔しとるんか……?) 「……あー、まあ、色々あるんやろ?あのふたりにも。オレらが口、挟むことやないで」 「うーん、そおなんやけどねぇ」 (アカンわ、オレ、また気持ち悪うなってきた) 「−−平次?アンタ、怖い顔やのうて、顔色悪いで?……って、熱もあるんやない?」 「お前、何、無理してんだよ?昨日は、なんともなかったよなぁ」 「服部君、帰った方がいいんじゃないの?わたし達は、ほら、和葉ちゃんがいれば大丈夫だから」 「あー、オレ、送って帰ろうか?どうせ今晩も、服部んちに世話になるしさ」 「……ええよ、工藤は来んでも。折角、大阪見物しとんのに、邪魔したらアカンしなぁ」 「あ、遠山!オレ、付き合うたるで?平次んちも知っとるし、家まで送って行ったるで」 「ほな、アンタに頼むわ。ええか、平次?」 「……ああ、スマン」 「えーと、ただいま。……服部……お前、大丈夫か?」 「ああ、ウチ帰って寝とったら、すっかり良おなったわ」 「まだ寝てろよ。調子悪いんだったら、無理して大阪見物なんて出かけなくても良かったのに」 「うーん、朝はなんともなかったんや」 「まあ、無理すんなよ。オレのことは構わなくていいからさ」 「おおきに、工藤」 「……今日の、アイツさあ」 「何?」 「お前の、友達?」 「ああオレを送ってくれた奴?そおやけど、どないしたん?」 「いや、−−別に。仲、良いなぁって、さ」 「そら同級生やもん。……まさか、工藤、オレとアイツの仲、勘ぐってるんか?」 「−−そうだよ、悪いか!」 「はははー、ただの友達やって」 「笑うなよ……じゃあ、オレは?」 「−−って、そっちの話かい」 「だって、一番気になる所じゃん。オレ、お前を独占したいんだよね。『友達』とか『親友』って言ったら、他にもいるかもしれないけど『恋人』ってさ、普通1人しか作らないじゃんか。オレはそれになりたいわけよ。だから、お前が和葉ちゃんと、仲良く話ししてんのも、見ててさあ……」 「オレが和葉と、話してる時……?」 「何て言うか、すっげームカムカしてさ。−−怒る筋合いも無いんだけど、腹が立って、しょうがなかった」 「……オレもや 」 「ん?何て言ったんだ?」 「え?いや、何も言うてへんで」 (オレも、や。工藤が蘭ちゃんと一緒におるとこ見て、気分悪うなったんや……) 「お前さぁ、オレだけのものになる気、ない?」 「ちょ、ちょお工藤っ!」 「オレ……お前の心も体も全部欲しいよ。できるなら、オレと会う前の過去も未来も、全部」 「−−工藤、苦し……っ!腕、離して……?」 「あ、悪い。──お前、具合悪いのにな。ちょっと力が入りすぎた」 「ホンマやで。ああ、苦しかった」 「−−オレが言ったこと、ちゃんと聞いてた?」 「−−何?……(聞こえとった、けど)」 「あ、いや。まあいいや」 【服部と友人……2】 「……例えばの話なんやけど」 「ん?」 「オレが友達やと思ってる奴がな、他の誰かと一緒にいて、親しそうにしとるん見て、なんやムカツクってのは、どういうことやろなぁ」 (はーん、コイツ例の遠距離恋愛の子となんかあったな) 「そら、『嫉妬』やろ」 「やっぱ、そおなるんやろか……」 「自分もそう思っとるんやろ?」 「−−」 「好きなんやないの?実はさ」 「そおなん、かな……?(せやけど、アイツ『男』やし……)」 「絶対そうや!お前、そいつと付き合え!そしたら」 「そしたら?」 「この辺のお前のファンの子が、お前諦めるやろから、周りの男が喜ぶで!」 「何やねん、それは」 「いや、ホンマやで?オレかて、気になっとる子がおるんやけどな」 「へぇ、それは初耳やな」 「その子がな、何と、お前んこと好きなんや」 「−−はぁ?」 「せやからお前、その東京の子と付き合え!オレのためにも」 「……はぁ……」 【工藤と服部……3】 『……!!今、何て言うたんや?』 「だから、オレ、大学はアメリカの方にしようかと思ってるんだ」 『何でまた、いきなりやな』 「そうでもないぜ。ずっと考えてた。探偵として、もっと視野を広げるためにもいいかなって」 『ふ、ふーん』 「お前、オレには世界一の名探偵になって欲しいんだろ?まずは、それの第一歩だな」 『そんなことのために、アメリカ行く言うんか?』 「そんなこと、じゃねーだろ。お前のご希望どおりの名探偵になろうって言うんだから。まあ、『蘭と結婚して子供の2、3人作って…』っていうのは、ちょっとムリそうだから、勘弁な」 『遠く、やな』 「……遠くの方が、いいんだろ?お前にとってもさ」 『何?どうゆうことや』 「近くにいると、さ、オレやっぱりお前のこと、諦めきれねーみたいだから……」 『せやから、遠くに行くっちゅうわけかい。何やねん!オレ、置いて行くんか!?』 「置いてくも何も、オレとお前は友達だろ?置いて行くも何もあったもんじゃないだろうが」 (もし、『恋人』だったら。−−置いて、行かないだろう。その前に、服部を日本へ残して外国へ行くなんて、考えなかった筈だ。) 『そ、そおやけど』 「まあ、二度と会えなくなるわけじゃあるまいし、今までだって、大阪と東京だったろ?言いたいことは電話でもメールでもいいんだしさ。あ、今度はちゃんと返事出すからさ。……前は、思いっきり無視しちまって、悪かったな」 『……そ、そんなん、イヤや』 「何年か経って、向こうの大学卒業して、いつか日本に帰って来る頃には、きっとお前のこと、『友達』だって思えるようになってるさ……」 『アカン、アカンわ。そんなん!(工藤が、オレのこと忘れる?オレが分からん所で、オレ以外のヤツと一緒に歩いたり、話したり、他の誰かのこと好きになったりする−−?)アカンって!』 「お前のこと友達として、大事にできるようになったら、帰って来るよ、−−多分」 『……イヤや』 「服部?」 『イヤや、そんなん!お前、アメリカ行くっちゅうのもイヤやし、オレんこと忘れるために行く言うんもイヤや!』 「−−それで、またオレに『友達』やれって言うのか、お前。それこそ『イヤ』だぜ」 『友達……や、ない。好きや。オレ、お前と離れとうないし、お前が他に恋人作るんも、絶対イヤや!』 「……服部」 『好きや、工藤!オレの、モンになって……?オレも、お前のモンになる、から……』 「それって、オレの恋人になるってこと?」 『そおや!』 「……ふーん。だったら来いよ、今すぐココに」 『工藤?』 「ココに来て、−−お前からキスしてくれよ」 『……行く』 「え?」 『今から行くからな、玄関の戸、開けて待っとれよ!!』 「……マジかよ?お前、夕べ大阪に居たじゃん。まだ、朝の6時なんだけど……」 「何、寝ぼけたこと言うとるんや?正真正銘の服部平次様や!さっさと中入らせぇ!オレ、夜通し走らせとって、眠いんや」 「まさか、バイクで来るとは思ってなかったからさぁ……」 「『今から行く』言うたやろが?新幹線の最終出てもうたし、夜バスも指定取れんかったし、朝イチの電車乗るよりも、こっちの方が早かったん…や……」 「あ!おい、玄関なんかで寝るなって!」 「うーん、堪忍……」 「−−服部、まだ約束、果たしてないだろ?」 「約束?……あ、そおやった、な」 「うん、そう。お前から、キスしてくれるんだろ?」 「……工藤、目ぇつぶって?」 「ああ、いいぜ」 (──ちゅっ) 「……こ、これで、ええやろ……?」 「ダメ」 「へ?あ、何?−−ちょお待てや!玄関で押し倒すなー!」 「……もう一回、してくれよ」 「え、えーっと……じゃあ。……ん?−−!ンッ!く、どお……っ」 「−−ごちそうさま」 「何、さらすんじゃ!このっ!……アカン、眠いわ」 「ベッド、行く?」 「う、ん……って、おい!こんアホ!どこ触っとるんやっ!」 「なーんか、まだ信じられなくってさぁ、……確認してる」 「……オレが寝てる間に変なことしたら、速攻で別れたるからな」 「へえ、別れられるの?あんなに、電話口で『離れるのはイヤッ!』って連発してたヤツが」 「……う」 「−−変なことなんて、しない。安心しろよ。……あ、でも、お前が目覚ましたら、ゆっくり続きやらせてもらうけどな−−って、あれ?もう、眠った?」 「うーん……工藤、側に、おって……?」 「……ああ……いるよ、ずっと。離せって言っても、もうダメだからな」 (2007.04.30) |
07年5月の無料配布本です。 長らく私のパソコンに眠っていたものを手直ししたものです。 当時(っていつの話だよ)はネットで 公開されている小説が多くて、 中にはセリフだけでストーリーが 展開するタイプのものが良くありました。 これは、その頃に、 そういうセリフだけの作品が書きたくて 書いたものだったと……。 いやあ、工藤と服部って標準語と大阪弁だから、 書き分けが楽でいいや(笑) 作中の服部の友人は、 当初、沖田だったんですが、 沖田がコナンに出演してしまい 設定が合わなくなったので、 ただの友人になっちゃいましたー(笑) 時の流れを感じるよね……。 |